産経新聞「なるには學問堂②」 2015.10.10

掲載紙
産経新聞
掲載日
2015年10月10日

2015年10月10日の産経新聞に掲載されました

2015年10月10日の産経新聞に掲載されました

記事

子供が自在に動き出す空間用意したい

夢をかなえる才能をはぐくむことを目的とした学童保育サービス「なるには學問堂」(大阪市北区)を始めた上村英樹さん(43)。學問堂の運営を通じてかなえたい「夢」について尋ねた。

學問堂を始める前は

JR西日本退職後、24歳でガソリンスタンドなどへ人材を派遣する会社「スペック」を立ち上げました。「世界一ユニークな中小企業」をコンセプトにいろいろな事業に取り組んでいます。

上村さんの生い立ちもユニークだとか

僕は大阪市平野区の風呂無し6畳の団地育ち。小学5年生から産経新聞の夕刊を配っていました。アルバイト代の一部を家に入れ、残りのほぼ全額を好きだった映画鑑賞に費やしていました。当時はパイロットになりたかったのですが、その夢を抱くきっかけも映画から。貧乏少年でしたが、夢を頼りに頑張って働いてきましたね。

「夢」が力になった

昭和40年代後半から50年代にかかる僕ら団塊ジュニア世代はお受験ブームや大手志向の「はしり」。夢を追うのではなく堅実に、楽して稼げる人生を望み、決してやりたいことを追及してこなかった親が多かったように思います。

僕は貧乏な苦学生でしたが、両親は子供に天賦の才を開いてほしいと自由にさせてくれた。自分が小さい夢をかなえつつ、人と違う道を歩めた。大きな夢をずっと温めてきたんです。志や心の持ちよう一つで子供って変わるんじゃないかな。夢をかなえる力を持つ子供が増えればこの国の未来も明るくなると思うのです。

学童のプログラムの一例を教えてください

夢をかなえた一流の人たちによる講話会を定期的に行い、子供たちが持つ天賦の才を刺激する一方で、日常的な学童保育の充実も目指しています。

例えば、世界で活躍できる人材になるには、自国の文化を知ることが大事。保育スペースに和室を設けるなどして、日本古来の礼儀作法や生活習慣を学ばせる。そういうものが根っこにあれば、和の精神がはぐくまれ、友達をいじめることもなくなるかなと。そして英語力を身に着ける際には勉強一辺倒にはしない。英語だけを使ってチェスで遊ぶなど、ゲーム性を持たせるよう工夫しています。

このほか、たくさんの時間をここで過ごす夏休みには、絵本「ぐりとぐら」に登場するカステラを、本と同じ作り方で実際に作ってみたりもしましたね。

上村さんから見た、今どきの子供たちはどうですか

今の子供たちはモノを与えられすぎて、自分で選択肢を作り出すことができなくなっているような気がするんです。講師として来ていただいた方のお話でもあったのですが、外で遊べない日に、「僕は何をすればいいの?」と泣く我が子にショックを受けたことがあったそうです。

僕らが子供のころは、例えば狭い団地の空き地で野球をやるにもルールを変えたり工夫をして遊びましたよね。3階以上の高さならホームラン、怖いおじさんの住んでいる家のベランダに入ったらアウト、とかね。そういうことができない子供が増えているんじゃないかな。ルールがすべてで、教えてないことを「教わっていない」とできない子が増えている。

子どもの人生を悲劇にするのか、喜劇にするのかは目標設定次第。シナリオをいかに設定するかで子供はどんどん変わる。親が一から教えるのではなく、空間を作ってやれば勝手に動き出す。そんな場を學問堂で用意したいです。

文・写真 木ノ下めぐみ

上村英樹

昭和47年、大阪市生まれ。関西大学卒業後、JR西日本入社。退社後の平成9年に職場の仲間と人材派遣を中心に手がける「スペック」を設立。ガソリンスタンドへの人材派遣などの事業を中心に展開。3人の息子の父親でもあり、「学校よりも長い時間を過ごすアフタースクールだからこそ付加価値のある時間を過ごさせたい」と、学童保育ビジネスに可能性を感じている。