- 掲載紙
- 日刊工業新聞
- 掲載日
- 2015年6月19日
2015年6月19日の日刊工業新聞に掲載されました
記事
新型学童保育
国際人養成も
人材派遣を営むスペック(大阪市北区、上村英樹社長、050-3530-8996)が、学童保育と”国際人養成塾”をかけ合わせた施設の運営を始めた。預かり時間は午後8時まで。公的な学童では不可能な時間まで対応して共働き家庭をサポートするとともに、預かるだけの施設とは一線を画す。新たなタイプの学童保育として根付くか。同社の狙いと取り組みを探った。
共働き家庭のニーズに対応
文化学びつつ自然に英語
「公的な学童保育では働く親のニーズを満たすのは難しい」。自身も共働きで小学生の子供を持つ上村社長はこう断言する。夜遅くまで預かる市立保育園がある乳・幼児期とは異なり、小学生は午後6時頃までの公設学童が中心。加えて、専業主婦家庭のように平日の習い事ができないことなどに思い悩み、離職や時短を選ぶ母親も少なくない。子どもの小学校入学がキャリアの壁として立ちはだかる。
スペックは壁を前に行き詰まる家庭の受け皿として約120人の保育が可能な「なるには學問堂」大阪梅田園をプレオープンした。小学校まで車で迎えに行くサービスを用意し、半径2km圏内の8校を中心に児童を募る計画だ。
「塾というと勘違いされそうだが、いわゆる”お勉強”を教えるカリキュラムはない」と上村社長は明かす。英語にしてもチェスなどのゲームが中心で「気が付けば英語が話せている状態を目指している」(上村社長)。園の基本方針は日本と海外の文化を体得し、なおかつ子ども自身が何になりたいかを見つけさせるもの。華道や茶道に使う和室のほか、拳法やプレゼンテーション用の「動の部屋」、プラモデルや工作用の「クリエイティブの部屋」、観察や書き物に使う「思索の部屋」などさまざまな部屋を設置。元Jリーガーやスタイリスト、歯医者などを講師として招き、具体的な”なるには”を語ってもらう。
「運営は手探りの状態」。ニーズは存在するが、どの程度なのかは未知数だ。公設学童の料金は月額数千円。民間学童は基本が月額一万数千円から数万円で、習い事のオプションがプラスされる施設が多い。一方で、なるにはの大阪梅田園は月額7万6000円と、決して安くはない。
上村社長は大阪梅田園を早期にモデルケースとして確立させ、全国でのフランチャイズ展開を模索。地方では、民家を活用した場合に国の家賃補助が得られる仕組みを活用し、料金設定を抑制する考えだ。「共働きを支援するだけでなく、世界で活躍できる国際人としての日本人を多く創出したい」と抱負を語る上村社長。同社の取り組みは始まったばかりだ。